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高校入試ー東京編②

2023年10月26日 12:00:00

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イベントその他

今回のひのき通信は「高校入試-東京都②」をお届けします。前回は2023年度の入試を振り返っただけで紙面が尽きてしまいました。今回はその続編として東京における高校入試の仕組みのお話です。

東京で高校入試に臨むとき、大きく分けて右の表に示したように4つの選択肢があります。表中の日程は、それぞれのテストの実施日です。この中で都立の一般入試については、ほとんどの受検生が応募する「第1次募集・分割前期募集」の日程を示しています。また私立は複数回実施する学校があるなど学校ごと細かく異なりますので、ご自身が受検する学校の受検日はHPなり募集要項などでしっかり確認するようにしてください。

 

◇ 都立一般入試

上記の中で、都立高校一般入試の仕組みが一番ややこしいので、ここから見ていきましょう。

ここからは右の表をご覧になりながらお読みください。都立高校の一般入試は1020点満点で評価されます。入試当日の国·数·英·理·社5科目のテストの得点700点(100点満点のテストの得点を1.4倍)と内申点320点の合計です。

ややこしいのがこの内申点です。内申点とは通知表の成績です。オール5だと45点満点になるはずですが、そうはならないのです。国·数·英·理·社の5教科は通知表の5段階の評定をそのまま使用しますが美術·体育·技家·音楽の4教科については通知表の点数を2倍します。つまり内申点の満点は、5×5+4×5×2=65(点)となるわけです。これを換算内申といいます。そして一般入試の得点としては、これをさらに300点満点に計算しなおし、さらにR5年度から導入されたスピーキングテストの得点20点を加算して内申点とします。
そしてテスト当日のペーパーテストの得点(700点満点)と合計したもので合否を判定するわけです。

ご存知の方は、いまの説明でもフムフムと思われたかも知れませんが、初めてのかたは「何が何やら」と云う感じではないでしょうか。

具体的に計算してみましょう。
成績中堅のひのき太郎くんに登場してもらいます。
太郎君の通知表はオール3だったとしましょう。太郎君の換算内申を計算します。

 3×5+3×4×2=39

これを300点満点にもう一度計算します。換算内申の満点は65点ですから300点満点への再計算は以下の式で求められます。

 300×(39/65)=180

ここにスピーキングテスト(ESAT-J)の成績(太郎君は、20点のうち12点を獲得したことにします)を合算したものが、太郎君の一般入試における内申点となります。180+12=192点ですね。

そしてテスト当日の5科の得点が316点だったとしましょう(因みにこれはR5年度都立入試の5科平均点です)。先ほどの内申点とこの316点を1.4倍したもの(つまり700点満点に換算します)を合算したもの(192+316×1.4=634点)が、彼の一般入試のおける得点となります。

ESAT-Jについては下記の6/20付け「ひのき通信」で詳しくご紹介をしていますので、そちらの記事をご覧ください。
ESAT-Jの最新情報について|中学受験・高校入試の学習塾|ひのき進学教室

さて、太郎君のことを成績中堅とご紹介しましたが、この得点だと偏差値45~50の高校が順当な受検校になってくるでしょう。志望校の選択肢を増やすためには、オール3では少し物足りません。通知表に3が並んでいる人は一つでも多く4をとるように頑張ってください

またこの計算方法は、技能4科を2倍するため、思わぬ逆転現象がおこることがあります。
こんどはA君とB君に登場してもらいましょう。A君は5科は得意ですが、技能系はチョット苦手。逆にB君は技能系には自信があるが、5科はいま一つという感じ。さて2人の内申点は?

ご覧のように素内申では1ポイントA君が上回りますが、換算内申ではB君が大きくリードします。

ここで、この計算方法は飽くまで都立の一般入試にだけ適応される計算方法だと云うことはご注意いただきたいと思います。私立の推薦だとか併願優遇に使用される内申点は、通知表に記載されたままの点数(素内申と言われます)が使われます。

さらに2024年度入試については大きな話題があります。「男女別募集定数」の廃止です。東京には全国で唯一男女別の定員制が設けられていました。これが2022年度、2023年度の緩和措置の実施結果を踏まえて2024年度から「男女合同選抜」に完全移行することになりました。これまで男女別の定員があったため、同じ学校でも男女で合格最低点が異なる(例えば合格した男子の点数が不合格になった女子の点数より低いなど)のケースがありましたが、こうした不公平が是正されることになります。

因みに2023年度の入試に於いては定員の20%を合同選抜とする緩和措置がとられたため全108校の中で男女で合格最低点が異なる学校は9校でした。しかし差が最も大きかった学校では51点もの差(女子-男子)があったとのことです。一般的にこの「男女別定員」は女子に不利に働くことが多かったようです。性別による不公平が解消されるのは大変よいことですね。

≪自校作成校について≫
東京都の教育委員会が「進学指導重点校」に指定している日比谷・西・国立・戸山・青山・立川・八王子東の7校と「進学重視型単位制高校」の新宿・墨田川・国分寺は国·数·英の3科について、都立国際は英語のみ自校で作成した問題を使用しています。

これは非常に難度の高い問題が並びます。それぞれの中学でトップクラスの成績を取っていた生徒たちが受検し、それでも平均点が50点を切る場合があるようなテストです。公立高校ですから指導要領を超えるような出題はありませんが、私立上位校を受験するような準備が必要になってきます。

少し細かいことを・・・。「じゅけん」という言葉ですが、都立高校の場合は実施されるのが「学力検査」なので「受検」、私立高校の場合は入学試験なので「受験」と表記されます。この記事の中でも区別して使用しています。

 

◇ 私立推薦入試

私立の推薦には「落ちる推薦」と「落ちない推薦」があります。いや、落ちない入試はないですね。「ほぼ落ちない」推薦です。自分の志望校がこの「ほぼ落ちない」推薦制度を持っていて、なおかつ自分の成績が基準を満たしているなら、この推薦制度を利用して入試に臨むのが最も安全です。私立の単願推薦と云う場合はほぼこの入試のことを言っていると思って間違いありません。これらの学校は12月中旬に「入試事前相談」を実施しています。都内の公立中学の先生方が高校を訪問し、そこで各高校が設定した推薦基準を満たしていることが確認できれば、1月の推薦入試での合格可能性はかなり高いと思って構いません。この推薦基準は中学校の内申点が基準です。これは前述の素内申です。3科(国·数·英)12以上とか5科(国·数·英·理·社)18以上などと規定されています。学校の成績だけで足りない場合には、英検·漢検などの検定合格などを評価して、1点加点とかの加点措置をしてくれる高校もあります

東京の公立中学の生徒は、中学校の先生方が事前相談に赴いてくださいますの、自ら動く必要はありません。ただ学校の成績だけで基準に達していない場合、上記の加点措置を利用できるのかどうかを確認するためにも学校開催の説明会あるいは個別相談会には自ら高校に出向きましょう。いずれにしろ自分の志望校は願書を出す前に自分の目でキチンと確かめておきましょう。

因みに「落ちる」推薦入試には事前相談はありません。基準点の表記も「推薦基準」ではなく「出願基準」となっていることが多いようです。「この成績ならば出願しても良いですよ」という基準だと思っておいてください。倍率も高いところでは4倍5倍などということもあります。大まかな言い方をすると概ね早慶GMARCHの付属校以上の難度をもつ高校の入試は「落ちる」入試と思っておいてよいでしょう。

 

◇ 私立一般入試

私立の一般受験はその形態自体は大変単純です。ほとんどの学校で国·数·英の3科目のテストを受けてその得点で合否が決まるテスト当日一発勝負の世界です。昔々の入試はほぼこれだけでした。

ところが今はこれに「併願優遇」と云う制度が絡んでくることが多いのです。そしてこうなると事態は一気にややこしくなります。

まず「併願」のお話から。併願とは単願ではないと云うことです。もっと言うと第一志望ではない、と云うことです。ですから言葉の正しい意味においては第一志望校でなければ全て「併願校」です。ところがここに制度としての併願が絡んでくると更に意味が付け加わります。

まず第一志望の合否がきまるまで入学手続きを待ってもらえます。つまり無駄になるかもしれない入学金を支払わなくても良いのです。これは分かり易いですね。次がチョット分かりにくいのですが、制度としての「併願」を利用する場合は、上記推薦入試と同様の基準があり、これを満たして出願するとこれも「ほぼ落ちない」入試になるのです。これを「併願優遇」と言います。つまりこれを利用することによって、かなり心強い滑り止めを確保することができるのです。そしていま、私立高校の約80%がこの制度をもっています。よって、いまほとんどの受験生がこの「併願優遇」の制度を利用して高校受験に臨んでいると言ってよいでしょう。ここでちょっと注意しておきたいのは「推薦基準」と「併願基準」を比べた場合、「併願基準」の方がいくらか高くなるのが普通です。「単願推薦」なら基準に達しているのに「併願優遇」を利用しようと思うと点数が足りない、などと云うことが起こります。このあたりも前もって十分調べておきましょう。

さて多くの高校が併願優遇の制度を持っていると何が起こるか。この制度を利用できない受験生は極めて不利な状況で受験に臨まなければならなくなります。併願をもらった生徒は「ほぼ落ちない」のですから・・・。例えば募集人員100名の併願制度を持つ高校があったとしましょう。例えばこの学校に併願で願書を出している生徒が50人いれば、素手で受験する生徒さんは残りの50人枠を狙わなければならないと云うことになります。もちろん私立高校は、合格しても入学しない生徒(入学辞退者)を見越して合格を出しますので、100名以上が合格しますが、それでも優遇制度を利用せずに受験する生徒にとってはハンディがあることは否めません。

先述のように「併願優遇」の基準は学校の成績です。推薦や都立の一般入試の場合はもちろんのことですが、このように私立の一般入試でも中学校の成績が安心・安全な入試には是非とも必要であることをしっかり認識しておいてください。

 

◇ 都立推薦入試

最後に都立の推薦入試についてです。「一般推薦」以外にも「文化·スポーツ等特別推薦」「理数等特別推薦」がありますが、以下の記事は概ね「一般推薦」を想定しています。

都立の推薦入試には私立のような基準はありません。中学で先生と相談して「推薦」がいただければ誰でも受けることが出来ます。とはいえ、中学の校長先生のお名前で推薦していただくわけですから、中学の先生方にそれなりの評価をしていただかねば、当然推薦はもらえません。

さて、都立の推薦入試の合否は
①.調査書
②.個人面接
③.集団討論
④.小論文または作文・実技検査・学校指定の検査
の合計によって判定されます。合否は上記4つの項目を点数化して判定します。いま4つの項目をもう少し詳しく見てみましょう。

①.調査書
 記載されるのは中3の成績だけです。通知書に記載される5段階の評定あるいはABC3段階の観点別評価が使用されますが、多くの学校で評定が使われています。また内申点の配点は50%以下とするルールがありますが、ほとんどの学校で上限いっぱいの50%に設定しています。

②·③·④は当日検査です。

②.個人面接
 全校で実施されます。受験生1人につき、10分程度です。出願時に提出した自己PRカードを基づいて実施されます。よく聞かれる基本事項だけでなく、その高校にどれだけ興味を持っているかなどを聞かれます。その学校が求めている生徒像をよく把握して受検に臨む必要があります。最近の大学入試に似ていますね。

③.集団討論
 ほとんどの学校で実施されます。5~6人のグループで、与えられたテーマについて討論します。コミュニケーション能力(協調性/社会性、積極性/リーダーシップ、貢献度、バランス感覚/傾聴力)や協調性、思考力・判断力・表現力などが評価されます。

④.小論文または作文・実技検査・学校指定の検査
 小論文または作文・実技検査・学校指定の検査のうちのひとつが課されます。普通科では、ほとんどの学校が「小論文または作文」です。

このうち「集団討論」は、コロナ禍のため2021年度~2023年度まで実施されていませんでしたが、2024年度については「必要と判断した学校で実施する」と教育委員会から発表されています。同委員会の「入学者選抜実施方法一覧」をみると、2024年度は日比谷高校、竹早高校、深沢高校、鷺宮高校、西高校、北園高校、篠崎高校、調布南高校、東大和南高校、永山高校の10校で集団討論が実施されるようです。

都立の推薦入試はとても倍率の高い入試です。前回の記事でもご紹介しましたが、高いところでは4倍~6倍などと云う倍率も出ます。平均しても2.47倍です。当然不合格の生徒の方が多いテストになります。ですので、都立の推薦・私立の「落ちる」推薦に挑戦しようとする場合に大事なのは気持ちの切り替えです。もし不合格だった場合「ダメだったかぁ、よし次!頑張る!!」とすぐに切り替えなければなりません。「ああすれば良かった、こうすれば受かっていたのでは?」と不合格を引っ張っていてはいけません。推薦が終わると目の前に一般入試が迫っているのです。一週間も落ち込んでいる暇などありません

推薦は小論文対策など、一般入試のための勉強以外の準備も必要で、学習時間を圧迫する側面もあります。先ほどの気持ちの切り替えに自信があるかどうかなども含め、十分に考えてから挑戦するようにしてください。

 

さて今回はここまでにします。
次回は神奈川県の高校入試についての記事を書く予定でおります。

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