「グローバル教育」について考えるシリーズ第2回、今回はIB(国際バカロレア)を取り上げます。
もっとよく知る「グローバル教育」
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国際バカロレア、最近耳にする機会がますます増えている言葉ではありますが、「いまひとつよく分からない」方も多いのではないでしょうか。実は筆者もそのひとりでした。そこで今回は自分の勉強も兼ねて、「IBはじめの一歩」のつもりで全く何も知らない状態から始めて、ある程度の見通しがつく程度の記事づくりをしてみようと思います。
IBについては、調べれば詳しい情報は山ほど出てきます。その情報をうまく読み解くための基礎知識が身につくような記事になれば良いな、と思っています。
さてうまくいきますかどうか。
【IB(国際バカロレア)とは何か】
やはりまず「IBとは何か」からでしょう。IBと云うと国際的に通用する大学入学資格を手に入れるための教育プログラムという理解が一般的なものではないでしょうか。
では、IB取得を目指す生徒たちはどのような能力を手にすれば「国際的に通用する」のでしょうか。それが「IBとは何か」を知るはじめの一歩でしょう。
IBはスイスのジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供している教育プログラムです。そのHPにはIBの使命として
国際バカロレア(IB)は、「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者」の育成を目的としています。
と謳っています。
こうした理念に基づいて教育された若者たちが、それぞれの国でリーダーに育っていってくれれば、確かに今よりはずっと良い世界が実現できるような気がします。
そしてこうした人材を育成するために、IBでは10個のあるべき学習者像を想定しています。
・探究する人(Inquirers)
・知識のある人(Knowledgeable)
・考える人(Thinkers)
・コミュニケーションができる人(Communicators)
・信念をもつ人(Principled)
・心を開く人(Open-minded)
・思いやりのある人(Caring)
・挑戦する人(Risk-takers)
・バランスのとれた人(Balanced)
・振り返りができる人(Reflective)
これは、IBが生徒に求める人物像で、IB生は常にこの人物像に立ち戻って自らを省みながら学習を進めることになります。グローバル化が進み、より一層多様化する世界をより良いものにしていく人物の育成を目指したものといえるでしょう。
この人物像については、それぞれの項目についてもう少し詳しい説明がなされていますので、ご興味のある方は文科省のIBコンソーシアムのHPの「IBの概要」のページ
https://ibconsortium.mext.go.jp/about-ib/
にアクセスしてみてください。
さて、IBは4つのコースを持っています
・PYP:初等教育プログラム(3才~12才)
・MYP:中等教育プログラム(11才~16才)
・DP:高等教育プログラム(16才~19才)
・CP:キャリアプログラム(16才~19才)
※このうちCPはキャリア教育・職業教育に関連したプログラムです
今回はこの中で、「DP」について見ていきましょう。
これは日本では高2・高3の2年間で学ぶコースで、このコースを経てIB Diploma(ディプロマとは学校や教育機関が発行する卒業証書や修了証書のこと)を取得することによって、世界中の大学の入学資格を得ることになるのです。ふつう私たちがIBというとき、このDPのことを想定していると思って良いと思います。
【DP(Diploma Programme)】
DPには6つの「教科グループ」と「コア」と呼ばれる3つの必須要件があります。
<教科グループ>
教科グループには、6つのグループごとに履修すべき教科が設定されています。
いま下表にそれを示します。

この各グループから1科目ずつ履修します。ただしGroup6は他の5つの中のいずれかで代替することもできます。つまり、Group1~Group5の中から6科目を選んでも良いということです。また通常はHL(High Level)3科目、SL(Standard Level)3科目を選ぶことになっています。
具体的にはどんな教科を学習することにになるのでしょうか。これだけではチョット分かりにくいですね。そこでいろいろ調べてみたところ、東京都千代田区にある千代田高等学校(2025年度4月に武蔵野大学附属千代田高等学校から名称変更)のHPに紹介されている同校の開講科目がとても分かりやすかったのでご紹介いたします。どんな授業が実施されるのか大変よく分かります。
なお、表中の赤字の教科は日本語で開講されているコースだそうです。

これをみると、それぞれのグループで一科目ずつが選ばれており、大変わかりやすい構成になっています。また日本語·英語·歴史をハイレベル(HL)で、化学·数学·音楽をスタンダードレベル(SL)で学んでいくことが分かります。どちらかと言うといわゆる文系よりの学習になるのでしょう。ただ数学はSLではありますが英語での授業になるのですね。ちょっとハードルは高そうです。
当然、学校ごとに開講講座は異なるでしょう。気になるIB校があるような場合には、その学校の開講講座をチェックしてみると良いでしょう。
さて千代田高校では、これを高2・高3の2年間で、他の一般教科と以下のような組み合わせで学んでいるようです。

保健・体育・家庭科・宗教などは通常の高校の授業と同じ内容を学ぶようです。
(「宗教」は、千代田高校の学校設置法人である武蔵野大学が浄土真宗本願寺派の精神を基盤として創設されているところから設定されている授業で、これは少し特殊かと思われますが…)
≪IB授業の特徴:通常のカリキュラムと何が違うのか≫
さて、「IB化学」とか「IB数学」等々の科目はIBのカリキュラムに基づいて授業がなされるわけですが、普通の高校の授業と何が違うのでしょう?
何といってもIBの授業の特徴はその授業の進め方にあります。授業において重視されているのは以下のような項目です。
≪暗記よりプロセスと概念の理解≫
年号や公式をただ覚えるのではなく、知識の背景や社会での役割を深く考える
≪双方向型の授業≫
先生が一方的に話す講義形式ではなく、生徒同士のディスカッションやプレゼンテーション、調べ学習が多く取り入れらる
≪答えが一つではない課題≫
自分の意見を論理的に組み立てて表現する力が求められ、評価は客観的なルーブリック(評価基準)に基づいて行われる
これをみると現行の指導要領で重視されている「主体的に学ぶ姿勢」「思考力・表現力」に通ずるものがありますね。文科省がIBを重視する所以です。
具体的にはどんな授業になるのか、数学を例にとって少し見てみましょう。
現在、日本の普通の高校では数学は「数学Ⅰ·A」「数学Ⅱ·B」「数学Ⅲ·C」で構成されています。そして文系であれば「数学Ⅰ·A」(場合によっては「数学Ⅱ·B」まで)、理系なら「数学Ⅲ·C」まで履修が必要などとなっています。
それに対してIB数学は「AA(Analysis and Approaches「解析とアプローチ」)」と「AI(Applications and Interpretation「応用と解釈」)」から成っています。
〔AA〕
AAは、「なぜこの公式が成り立つのか」と云う根本的な問いや抽象的な数式の展開能力を評価するなど論理的な思考力が求められる構成になっており、「微積分」の分野に授業時間の多くが当てられています。
〔AI〕
AIは、実社会での課題を数学的に分析することを目的としており、授業時間の多くを「統計と確率」「行列」の分野に費やし、ビジネスに直結した手法を学びます。
高校数学である以上、学習する内容は通常の高校と大きく隔たることは無いようですが、「実社会での使用」をより強く意識した構成になっているようです。
次に、千代田高校の時間割に「IB TOK」「IB CAS」「IB EE」とありますが、これが「コア」と呼ばれる3つの必須要件に相当します。
では、これはどのような学びなのでしょう。
「コア」とは「教科」とは別に受講者が取り組まなければならない課題です。
課題論文EE(Extended Essay)、知の理論TOK(Theory of Knowledge)、創造性·活動·奉仕CAS(Creativity,Activity,Service)の3つからなり、ひとつでも欠けると教科の成績が良くてもIB資格は得られません。まさに「コア」なのです。
この「コア」がIBの学びを大きく特徴づけるものになっているようなのですが、これについては次回以降の記事で取り上げたいと思います。
ネットで検索すると、ご自身がIBの卒業生だったり、いま将にIB生であったりする方の体験談など多くのアドバイスに接することが出来ます。
こうした記事は、IBを進路の選択肢に考えている生徒さんにとっては大きな参考になりましょう。
今回の記事がそうした記事を読むときの参考になってくれればと思っています。
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