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高校入試-神奈川編

2023年11月22日 14:00:00

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イベントその他

高校入試シリーズの第3回、今回は神奈川編をお送りいたします。

神奈川県では2024年度に公立高校の入試制度が変更されます。そこでこの記事では公立の入試制度を中心に話をすすめたいと思います。

東京編とは趣向を変えて、中学3年生のひのき陽葵(ひまり)さんの高校入試に密着して話を進めていくことにしましょう(ちなみに陽葵という名前は、女の子の名前人気ランキング7年連続トップだそうです^^)。

陽葵さんは学校の成績はオール4模試の5科偏差値が60の女子と想定します。第一志望は県立多摩高校ですが、神奈川県·東京都の私立にも興味を持っています。

中学校の先生も「2024年度は公立高校の入試制度が変わるよ」と仰っていたので陽葵さんは少し不安です。そこで、どんな入試制度になったのか調べてみました。すると以下のようなことが分かりました。

公立の入試においては全ての受験生に対して学力検査を実施します。受検機会は1回です。このテストは全課程同日程で行われ「共通選抜」と言われます。
学力検査はほとんどの高校で英語·国語·数学·理科·社会の5教科を実施し (※専門学科など一部の高校では3~4教科に教科数を減らしている場合もあります)、さらに多摩高校を含む一部の学校では「特色検査」が実施されます。
そして、受検生の選抜は第1次選考、第2次選考と云う2段階で行われます。陽葵さんの第一志望の多摩高校では第1次選考では「内申点」「学力検査」「特色検査」が、第2次選考では「学力検査」「観点別評価」「特色検査」が選考資料となり、まず定員の90%を第1次選考で、残り10%を第2次選考で選考します。選考が2回実施されるということであり、テストを2回受けるわけではありません。


続いて陽葵さんは選考に使われる数値を確認してみました。

〈内申点〉
 
通知表の5段階の数値です。2年生の9教科の内申点(45点満点)と3年生の内申点の2倍(90点満点)の合計135点満点になります。

〈学力検査〉
 
テスト当日に実施される国語·数学·英語·理科·社会の5教科の点数の合計500点満点です。検査時間は各科とも50分です。2024年度は2月14日(水)に実施されることが決まっています。

〈特色検査〉
 
教育委員会は特色検査を「高等学校が共通の検査以外に各校の特色に応じて実施することができる検査で、学力検査や面接では測ることのできない総合的な能力や特性をみる検査」としており、自己表現検査・実技検査・面接の3種類があります。基本的に、上位校で行われる特色検査は全て自己表現検査であると考えて問題ありません。特色検査を実施する公立高校は全部で28校、そのうち学力向上進学重点校及びエントリー校である18校は、2024年度の自己表現検査を「共通問題」「共通選択問題」を用いて実施します。

〈観点別評価〉
これは2次選考に使用される資料で、通知表(調査書)の「主体的に学習に取り組む態度」の観点別評価のことです。2023年度まで実施されていた面接の代わりとなる評価項目と考えて良いでしょう。各科目の「主体的に学習に取り組む態度」をA=3点、B=2点、C=1点と点数化して27点満点としています。ただし、選考に使われるのは3年生12月の成績のみです。


陽葵さんの点数を実際に計算してみます。陽葵さんの内申点は2年·3年ともオール4、観点別の評価は21点です。模試などの結果から学力検査では420点、特色検査では60点の得点が期待できると考えましょう。

第1次選考・第2次選考とも先ず「内申点」「学力検査」「特色検査」「観点別評価」を100点満点に換算します。そのうえで、各高校が決めた比率に基づいて第1次選考で使うS1値、第2次選考に使うS2値を計算します。

【1次選考】
 多摩高校では「内申点」:「学力検査」:「特色検査」=4:6:2の比率で計算されます。この資料の比率については高校ごとに異なります。

陽葵さんのS1値は以下のようになります。

 S180×4+82×6+60×2932


【2次選考】
 
1次選考で合格者の90%を決めた後、残り10%の合格者を2次選考で選びます。多摩高校の2次選考で使われるS2値は「学力検査」:「観点別評価」:「特色検査」=8:2:2の比率で計算されますので、陽葵さんのS2値は

 S282×8+78×2+60×2812

となります。

陽葵さんは内申点と特色検査の得点にいまひとつ自信がもてず、少し入りやすいと思われる生田高校についても調べてみました。生田高校では「特色検査」は実施せず、第1次選考は「内申点」:「学力検査」=5:5、第2次選考では 「学力検査」:「観点別評価」=8:2で計算します。陽葵さんの得点は

 S1値80×5+82×5810

 S2値82×8+78×2812

となります。

 

ここでは話を分かり易くするために、全日制の課程を想定した説明に終始しました。また具体的な数値については多摩高校・生田高校の数値のみ取り上げました。「特色検査」の有無、S1値・S2値を計算するための比率は学校ごとに異なります。また、上記の計算の中では触れませんでしたが、学校によっては一部の科目について「重点化」(例:神奈川総合高校の個性化コースでは、学力検査において点数の高い1科目について、その点数を2倍にする)が行われることがあります

「内申点」には自信があるが「学力検査」の得点には不安を感じている人、あるいはその逆のケースもあるでしょう。学校ごとに「内申点」と「学力検査」の比率は大きく異なります。点数を取りやすいかどうかだけで志望校を決めるわけではないですが、合格するためには自分に合った受検プログラムを考えるのも大変大事なことです。学校ごとの比率や重点化についての詳細は教育委員会が発表していますので、志望校にする可能性のある学校の情報はしっかり押さえておきましょう

 

次に陽葵さんは私立高校についても調べてみました。すると、神奈川県の私立高校には様々な募集区分があることが分かりました。

大きく分けると「推薦入試」「書類選考」「一般入試」の3種類です。それぞれ簡単に紹介します

【推薦入試】
 各高校が独自に出している「推薦基準」をクリアしている場合に中学の校長先生の名前で推薦をいただき受験するタイプです。他校は受験できません。面接、作文などが課されますが、ほぼ確実に合格 できます。

【書類選考】
 中学の成績のみで合格が決まります。学力検査も面接も実施されません。他校も受験できる「併願型」と受験できない「専願型」があります。どちらのタイプかは、高校ごとに決まっています。「併願型」は第1志望が公立高校の場合を想定していますが、学校によっては他の私立高校との併願も可能な場合があります。

【一般入試(専願確約)】
 各高校が決めた成績基準をクリアしていれば、ほぼ合格が決まります。ただし他校は受験できません。学力検査は実施されますが、よほどのことがない限り不合格にはなりません。

【一般入試(併願確約)】
 第1志望の公立高校が不合格だった場合に入学する条件のもと、高校が示す基準に達していればほぼ合格が見込めるシステムです。推薦や専願より基準の数値が少し高めになるのが一般的です。学校によっては、他の私立高校との併願も可能な場合があります。

 

ここまでのテストは、中学校の成績が合否に大きく関わります。12月に中学校の先生と高校の先生による「事前相談」があり、それぞれ基準を満たしていればこの時点でほぼ合格が確約されます。「事前確約型」とでも言えましょうか。

 

【一般入試(オープン入試)】
 これは中学の内申点が合否に全く関係しない、実力勝負の入試です。早慶MARCHの付属校など難関校に多い形態ですが、「併願」制度を持っている高校も枠はそれほど大きくはありませんが「オープン入試」の名称で実力本位の入試を実施するところがあります。


陽葵さんのような県立第一志望の生徒は、私立受験では併願型の入試を選択することになります。ただ「公立がダメなら併願校」という選択に物足りなさを感じる上位層が「滑り止め」はしっかり確保したうえで、難関私立の「オープン入試」に挑戦するケースも多くなってきています。

 

【東京都の私立受験】
 上記以外に神奈川県の中学生が東京都内の私立高校を受験する場合があります。東京都内の私立については前回の記事「高校入試-東京編②」を参照してください。

その際、言葉遣いの面で少しだけご注意を。

東京では「確約」という言葉は使いません。神奈川のように「併願確約」とは呼ばず「併願優遇」という言葉を使います。「優遇」だけだとチョット不安かな、と思われる向きもあるかも知れませんが心配いりません。これは神奈川の「確約」とほとんど同じ意味です。「併願優遇」が取れたら安心して受験に臨んでください。

 

以上、今回は神奈川県の高校入試について見てきました。

上記のように公立では選考に使われる資料の比率や重点化の有無が学校ごとに異なります。また私立ではひとつの学校が複数の選抜形態をもっています。志望校ごとに対策が大きく異なるのが神奈川県の入試の特徴のひとつと言って良いかもしれません。志望校が固まってきたら受験する可能性のある学校については、様々な情報をしっかり集めて受験に臨んでください。

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