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大きく変わった中学英語

2022年11月20日 12:00:00

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イベントその他

昨年度から中学では新しい指導要領に基づいた授業が始まっています。戦後最大の大改革ともいわれていますが、中でももっとも大きな変更が加えられたのが英語です。

英語については共通テストとの絡みで高校英語が、また小5·小6での教科化と低学年化(小3·小4でも外国語活動(英語)が始まりました)のために小学英語が取り上げられることが少なくありませんが、実は中学英語も大きく変わっているのです。

先ず新しい英語教育のイメージを見てみましょう。これは文部科学省の「教育課程部会」が資料として公表しているものです。

中学校の部分に着目すると、先ず学習レベルの位置づけがCEFRのA1(英検3級相当)からA2(準2級)に上がっています。また「自分自身の考えや気持ちなどを伝え合う」や「実際に活用する言語活動の充実」など、使える英語に重きが置かれていることが分かります。

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CEFRとは"Common European Framework Reference for Languages"の頭文字を取ったもので、日本語では「ヨーロッパ言語共通参照枠」と呼ばれています。

このCEFRは、多言語が共存するヨーロッパにおいて、それぞれの言語についてどの程度の語学力があるのかを客観的に測定する共通の物差しとして2001年から公式に活用されています。全部で38もの言語に対応しており、現在では世界中の語学学校でこのCEFRが生徒の語学力を測定する指標として採用されています。ここ数年日本でも認知度が高まり、外国語の検定試験や各資格の結果の比較にもCEFRが用いられるようになりました。

CEFRは左表のように6段階に分かれているのですが、中学・高校で一般的な英語教育を受けただけの日本人の場合、A1~B1にレベルが密集する傾向がありました。そこでCEFRをベースとして日本の英語教育における利用を目的として日本独自の新たな英語能力習熟度指標CEFR-Jが開発されました。CEFR-Jでは、日本人の一般的な英語能力に合わせてPre A1、A1-1、A1-2、A1-3、A2-1、A2-2、B1-1、B1-2、B2-1、B2-2、C1、C2の全12段階に細分化しています。日本人の英語学習初心者のためにかなり細かくレベル分けが設定されているため、少しの上達でも着実にレベルアップを実感することができ、モチベーションを維持しながら英語学習に取り組むことができます。
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さてもう少し具体的に変更点を見ていきましょう。

まず何といっても単語数です。変更前は中学校卒業時に約1200語を習得となっていましたが、新要領では約1600~1800語となっています。しかもこれは小学校で600~700語を習得してうえでの話です。つまり中学卒業時点で旧要領では約1200語のところが新要領では約2200~2500語と2倍程度に増えているのです。
因みに昨年と今年の新中1の皆さんの様子をみてみると、600~700のヴォキャブラリーを身に付けて中学に進学した生徒さんはほとんどいなかったように思います。

次に中学での授業です。「抜本的評価のイメージ」の表をもう一度ご覧ください。新しい指導要領では「授業は外国語で」行うことになっています。これはどの程度実現されているのでしょうか。いま文部科学省による「令和3年度『英語教育実施状況調査』概要」を見てみると、「発話をおおむね英語で行っている教師と発話の半分以上を英語で行っている教師の割合〔全学年〕」が、中学校では東京都で81.7%、神奈川県で61.9%となっており、中学の先生方のご努力の様子が伺える数字になっています。「オールイングリッシュ」の授業に対しては日本学術会議からも「『英語による英語授業』に集中することは、初等中等教育の英語教育では適切と言えない」という提言もでており、評価の定まらない部分もありますが、英語の苦手な生徒にとっては「日本語で説明されても分からない」のものが益々苦手の度を増す可能性もなしとは言えないですね。

文法では「原型不定詞」「現在完了進行形」「仮定法」が高校内容から中学におりてきました。これで、ほぼ日常会話に必要な文法項目はすべて中学校の時点で習得することになります。

また4技能についても、単に「話す」だったものを「話す(やり取り)」「話す(発表)」とし、4技能5領域と云うことになりました。この「話す(やり取り)」と云う項目は、関心のある事柄については「即興的に」伝え合うことができるようにすることを目指しています。

このように、ざっと見ただけでもかなりの充実度です。ところが今回の改定では授業時数の増加はありません。これだけの増量を授業コマを増やすことなく教えようという訳ですから、これは大変にならないほうが不思議です。

 

2021年度から当然教科書も変わりました。この変化も驚くべきものです。保護者の皆さまは英語の教科書にどんなイメージを持っていらっしゃいますか?

まず中1ではアルファベットの練習をして、be動詞の文章(This is a pen. I am a student.)があり、これの否定文・疑問文の作り方を1カ月ほどかけて丁寧に学習し、次に一般動詞(I play baseball. You have an apple)についても同じように学習を進め、それでもbe動詞と一般動詞の区別がつかずに混乱する…、なんてイメージではありませんか?

本文に即して基本的な文法事項から徐々に複雑なものに推移していく構成になっていたのがこれまでの教科書でした。1年生のうちは何とかなるけど、2年生で出てくる不定詞・動名詞あたりからだんだん混乱してくる、後置修飾も出てくるしね、というのがこれまでの中学英語だったわけです。

新教科書は全く違います
いま手元にある「Sunshine(開隆堂)」の教科書を見てみます。Program1(最初の単元です)の本文にあたる部分での健とエミリーの会話です。

K)  I’m Ken.  You are in my class.
E)  Oh, really?  Great.
    I want to go to the gym.
K)  I see.  Let’s go.
E)  Thanks.  You’re so helpful.
K)  No problem.  Where are you from?
E)  I’m from Australia.

よく教科書にある会話文ではありますが、この短い会話のなかにbe動詞と一般動詞が両方とも出てきていますしかも驚くべきことにその一般動詞は「want to go」と後ろに不定詞を取る形をしています。これまで不定詞は2年生の夏休み前後に出てきて、多くの中2生を悩ませる文法事項でした。それが1年生の冒頭に出てくるわけです。もちろんここで文法的な説明はしません。教科書にもNewWordsのひとつとして「want to~」の形で「~したい」という意味の語として出てきています。「~to go」ではないのですね。先ず言い回しを覚えよう、言いたいことが言えるようになろう、というわけです。

このProgram1の最後に「英語のしくみ」というページが用意され、ここでbe動詞を説明し、肯定文・否定文・疑問文の作り方を教えています。さらに同じページで「Where~?」も教えるという構成になっています。そして次のProgram2の「英語のしくみ」の中で一般動詞の肯定文・否定文・疑問文の作り方および「When do you~?」の表現を教えることになっています。

この教科書はProgram10まであります。つまり旧教科書では半年近くかけていた項目を、約2カ月で終わらせるというスケジュール感になっているわけです。これは当然、小5·小6で英語が教科化され、ある程度の表現は身に着け、なおかつ単語を600~700学んできた、という前提で教科書が作成されていることを物語っています。ただ前述のとおり、教室で出会う小6·中1生を見ている限りでは、指導要領に謳われている「小学校における外国語活動を通じて音声面を中心としたコミュニケーションに対する積極的な態度などの一定の素地が育成され」ているようには見えず、特に英単語600~700の定着はかなり苦しいのではないかというのが実感です。

このような状況をみると、小5~中1の期間についてはとにかく語彙力を充実させていく必要があるでしょう。それには先ず音読です。教科書をしっかり音読できるようにしていきましょう。文法は後回しにして先ずは表現から、という方針は日常的に英語に触れる環境にあるほど有利でしょう。いまは教科書にも音声データがついています。周りにネイティブスピーカーがいなくても、教科書をすらすら読めるようにする、そしてシャドーイングでついていけるようにする練習をすることで、日常的に生きた英語に触れる機会を持つことができる時代になっています。

よく言われることですが声に出して読めない単語は「聞き取れない」から「覚えない」し「·書けない」のです。英検の2次試験も東京都が実施するESAT-Jも、テストは文章の音読から始まります。

 

新指導要領に基づいた高校入試が今春初めて実施されました。高校入試での話題は何といっても新たに加えられた「原形不定詞」「現在完了進行形」そして「仮定法」です。全国的にみると8割以上の都道府県で出題されているようです。文中での使用が多かったようですが、語順整除や空所補充の問題もありました。

ここまでの記事で文法の重要性が軽減されたのか、と思われた方がいらっしゃるかもしれませんが、決してそんなことはありません。学習の順番が変わっただけです。高校から文法事項が下りてくるわけですから、当然内容は難化します。中2·中3ではこれらの難しくなった内容をしっかりと身に付けていく必要があるのです。入試問題に即して少し見てみましょう。

例えば神奈川県の「原形不定詞」の問題は以下のような適語補充でした。
Mr. Suzuki:I think learning about (    ) cultures will help you understand people living in other countries.

Sophia:I think so, too, Mr. Suzuki. I’ll try many things in Japan.

 1. different 2. Few 3.necessary 4. Same   〔 解答 1 〕

<help+目的語+原型不定詞>の典型的な形です。空所部分に原形不定詞が使われているわけではありませんが、文脈把握には理解が欠かせないパターンです。

また、仮定法については熊本県の適語補充が典型的な例かもしれません。
A:Look at the man over there! He’s playing basketball very well.
B:
Right. He’s so cool! I wish I (    ) play like him.

 ア will イ can ウ could エ should     〔 解答 ウ 〕

中学で扱われる仮定法は「仮定法過去」と「I wish構文」ですが、文脈把握で扱われる場合と助動詞の形を問う場合があります。この熊本県の問題を見ると、助動詞の使い方( would「~だろうに」、could「~できるだろうに」、might「~かもしれないのに」など)をしっかり理解しておかねばならないことがよく分かりますね。

現在完了進行形は難しい表現ではありませんが、現在完了と混乱しがちです。「been ~ing」の表現がすぐ出てくるためには「動作を表す継続用法は、基本的に現在完了進行形を使う」ことをしっかり理解しておく必要があるでしょう。

いずれにしても今年は新たな項目についての難問は見られませんでしたが、単語は確実に難化しています。またSDGsに関する出題など、社会に目を向けた受験勉強の重要性は英語についてもあてはまります。

あと注意したいのはリスニングの重要性です。東京都や神奈川県では入試問題におけるリスニングの配点割合はまだ20%程度ですが、千葉や大阪などではすでに33%になっています。またこれまで主流だった2回読みから1回読みへの動きも広まっています。リスニング対策もますます重要になってきます。

長々書いてきましたが、もちろんこれまでどおり長文読解の力も変わらず必要です。ひのきでは従来の受験勉強に対するサポートも怠りなく続けながら、これらの新しい動きにも適切に対応していきます。

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