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中学受験という選択

2023年03月31日 12:00:00

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イベントその他

例年よりもずいぶん早く桜が満開を迎える中、ひのき進学教室では恒例の春期講座が始まりました。

今回のひのき通信では、少しタイミングは遅くなってしまったのですが、2023年度の中学受験を振り返りつつ、中学受験全般について書いてみたいと思います。高校受験については、春以降に各種資料が都県の教育委員会から発表されますのでそれを待って振り返ってみたいと思っています。

中学入試の結果については様々なデータが出回りますが、中学受験全体をまとめたデータがどこか公的な機関から発表されるわけではありません。各中学校が発表する志願者数・受験者数・合格者数を大手塾や模試主催団体が独自に集計し、それらを総合的に処理し推測する形で発表されています。いろいろな仮定の下での集計のため、発表する機関によって少しずつ数値が異なります。媒体により異なったデータを目にされると思いますが、どれも根拠のある数字なのです。
以下のレポートに使う数字は、「合判模試」を主宰している「首都圏模試センター」が公表している資料に基づいています。

さてそのデータによると、今年の受験者は52,600名、受験率は17.86%でした。この数字を過去3年間および今後3年間のデータと比べてみましょう。
ここ数年、小学校の卒業生の数は微減傾向ですが、受験者数は毎年伸び続けているのが分かります。絶対数の減を受験率による増が上回っているわけですね。今後も受験率の下がる要因がいまのところ考えられませんので、来年度以降も厳しい受験状況が続くと考えておいた方が良さそうです。

実はいま、中学受験は3回目のブームを迎えていると言われています。第1回はバブル経済の最盛期のころ(このブームはバブルの崩壊で終わりました)、2回目が指導要領が「ゆとり教育」に舵を切った直後(このときはリーマンショックを機に中受の受験者数は減少に転じました)、そしていまが3回目です。特に景気が良いわけでもなく、指導要領が不安視されているわけでもない今、なぜブームが起こっているのでしょうか。巷間言われているのがコロナ禍の影響です。パンデミックにより学校が一斉休校を余儀なくされたとき、公立の対応が今一つだったのに比べ、いちはやくオンライン授業の導入などで素早い対応を見せた私立が好感された、と言われています。またこれはコロナ以前からの傾向ですが、大学入試改革への不安が付属校の人気を後押ししている状況も継続しているとも考えられます。
私立中の教育への期待という意味では、今年の芝国際中学校の人気ぶりがひとつの好例になるかもしれません。昨年までの東京女子学園が共学化して芝国際となったのですが名称変更だけでなく、「未来に貢献する学び」として「STEAM教育・プログラミング教育」「起業教育」「プレゼンテーション講座」を挙げ最先端の教育環境を整えていることが評価され、多くの受験生から支持を集めました。
また付属校人気という視点で云えば、2026年から明治大学の系列校になり、2029年から明治大学へ推薦で入学できる(卒業生の7割を目指す)ことになる日本学園の受験者数が対昨年比7.5倍3日間のテストの実質倍率が7.7倍となっています。ここ数年の傾向として、の2校のように中堅校の学校改革による難化が多くなっていることが挙げられるでしょう。

ともかく、上記の数字に公立中高一貫校を受験している生徒17,386名(これも推定)を加えた63,286名が中学入試に挑んだことになります。受験率は約21%、およそ4.65人にひとりの割合になります。これは平均ですので、受験熱の高いところでは3割以上の受験率になっているところも少なくないと思われます。
事実、筆者が勤務している教室などで話を聞くと、受験初日の2月1日など、クラスの半数が受験のため小学校をお休みするなんてケースもあるようです。首都圏においては中学受験が益々普通の選択肢のひとつになってきていることがよく分かります。

今年のひのき生の頑張りの結果は、2023年2月5日付の「ひのき通信」に合格実績が出ていますので、ぜひご覧ください。

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さて、ここからは中学受験に臨む受験生と保護者の皆様に、筆者が考えていることをいくつか書いておきたいと思います。何かの参考にしていただければ幸いです。

①中学受験の勉強は小学校の学習の延長ではない
高校受験と違い中学受験は学校での学習の延長上にあるものではない、と筆者は思っています。
ちょっと穏やかではない物言いですが、小学校で使われている教科書と、中学受験のために編纂されたテキストを見比べてみると、その感を強くします。中学受験のためのテキストは受験に対応した特別のカリキュラムに基づいて編集されています。首都圏においては、ほとんどの中学受験生が四谷大塚カリキュラム日能研カリキュラムSAPIXカリキュラム首都模試カリキュラム(栄光ゼミナール準拠)などの大手塾が提供しているカリキュラムに則って学習を進めています。これらは進行速度に少し差がありますが、どのカリキュラムにおいても中学受験に必要な知識・スキルを身に付けることができるようになっています。
その内容が、小学校の教科書を大きく超えるものばかりなのです。特に算数では、進度においても内容においても、学校算数とは異なった教科といっても良いくらいです。これを我々は「受験算数」と呼んでいるのですが、最難関校に限らず、中堅校の受験に際しても、この「受験算数」が必要になってきます。そして、この受験算数を小学校の算数の教科書で身に付けるのは大変難しいです(受験算数については「2022年9月付ひのき通信」をご参照ください)。
他の教科についても多かれ少なかれ同じような事情であり、中学受験のための学習はどうしても特別なものになってしまい、通塾が必要な状況が生まれてしまいます。これは中学受験の様相が変化しない限り、変えることは難しいのではないでしょうか。

②過去問対策の重要性
全ての受験勉強に通ずることですが、最大最強の受験勉強は過去問特訓です(はい、筆者の感想です)。志望校の過去問は繰り返し何度も解きましょう。第一志望校なら市販の過去問集に乗っている問題は全てやり尽くしてください。更に数理系の問題(算数・理科)は同じ問題を何度も繰り返し解きましょう。一度解いたものは解答は分かっているのですが、それを導き出す筋道を理解しているかを何度も確認しましょう。
過去問対策については時々「志望校の過去問だけを解くコースはないのか」という質問をお受けすることがあります。ひのきではクラス授業でも過去問特訓を実施しています。その授業で自分の志望校以外の問題を扱う意味があるのかを心配してのことだと思いますが、これについてはあまり心配することはないと思っています。同レベルの学校の過去問は演習問題として十分役に立ちます
大手塾では「志望校別特訓クラス」を設置しているようですが、そのクラス編成を見てみると、実際に「志望校別クラス」になっているのは、首都圏の最々難関の十数校だけです。それ以外の学校については、最難関校でも同じレベルの学校をまとめてクラス編成をしています。つまり「志望校別クラス分け」が意味を持つのは、極々限られた学校のみにあてはまることと思っておいて間違いありません。
さて、それでは過去問演習はいつから始めれば良いのでしょう。科目によって異なりますが、概ね小6の夏休み辺りから始めるのが妥当かと思います。
ちょっと注意しておきたいことは、当初点数は取れませんよと云うこと。それまで生徒は単元別の学習をしています。「これから何に関する問題を解くか」が分かった状態で問題に臨むことが多かったわけですが、入試問題は総合問題です。何に関する問題かの分析から入らねばならないのです。よってほとんどの生徒が初めて過去問に接したときはヒドイ点数を取ります。最初はそんなものだと割り切りましょう。
では、最終的にどの程度の点数を取ればいいのでしょう。これも入試に臨むときに心しておいた方が良いのですが、入試問題は決して満点が取れるようには設計されていません。そして満点を取る必要もありません(ここ大事なところです)。個々にはいろいろと差がありますが、概ね合格点は6割だと思っておいてください。そうすると自分の正答率が8割だとして、問題の8割程度を解けば、0.8×0.8=0.64で6割以上の得点につながります。入試問題の場合、これで良いのです。

③自分に合った学校を探そう
志望校選びに際しての生徒・保護者の皆様の取り組み方も、過去のブームのころとは様変わりしています。受験生が押し並べて、より偏差値レベルの高い学校を目指して頑張るという構図はずいぶん変わったように思います。
もちろん低学年から塾通いをして、御三家などと呼ばれる学校を始めとする最難関校を目指すという受験形態も厳然として存在し続けてはいます。しかし学校改革、教育改革に一生懸命に取り組んでいる中堅校が大きな人気を集める話題校になるケースも増えています。
2023年度の受験界で大きな話題になったいくつかの学校も上記でご紹介したように、元々は難関校ではありませんでした。「理数系教育の充実」や「英語教育の充実」に力を入れ、来るべき新しい世界に対応できる人材を育てる、という教育に舵を切る学校が保護者の皆様に好感され、志望者を増やしているのです。

楽しかるべき、そして最も成長著しい時期に過ごす中学・高校生活を充実したものにするためにも、何のために何を目指して受験するのかをよくご家庭でご相談いただきたいと思います。そのうえで、目的を叶えてくれる学校を探しましょう。その際、偏差値など惑わされることなく(偏差値は学校の難易度は表しますが、必ずしも良否を表す指標ではありません。増してお子様に合っている学校かどうかは全く表していません)、直接学校に行き、ご自分の目で耳で確かめましょう。
そしてご家庭の方針を塾にお伝えください。大手塾ではなかなか出来ないかも知れませんが「ひのき」のような地元密着塾であれば、ご希望に沿った形での受験が可能なはずです。

④受験勉強を楽しもう
保護者の方はお分かりのことと思いますが、勉強は楽しいですよね。当然受験勉強だって本当は楽しいのです。特に中学受験は小学校の水準を超えた学習を進めていきますので、学習内容が理解できてくれば、大きな知的興奮を味わうことができます。これを楽しまない手はないです。
ただ受験は「合否」という結果がかかるイベントですので楽しいとばかりも言っておれないし、月例テストやら模試などで思ったような結果が出ないと、精神的にもキツいのは良く分かります。受験生本人と云うより、むしろ保護者の方にストレスがたまります。難しいかも知れませんが、保護者の方は一歩あるいは半歩後ろから中学受験が本人にとって正しい選択かどうか、見守っていただきたいと思います。
この記事の最初の方で、「中受は特別なことではなくなった」という意味のことを書きました。がこれは選択肢が増えたと云うことです。2割の生徒が中学受験に挑んだとして、残り8割の生徒は公立中学に進むのです。
筆者は「中学受験をしない」という選択も大いに有りだと思っています。中学受験に携わってみて思うことは(よく言われることですが…)早熟なお子さんが有利、ということです。この子は高校受験に挑戦した方が良い結果を生むだろうな、と思うケースも少なくありません。
個人的には、ヒトは10代のどこかの時期に必死になって受験勉強に取り組むべきだ、と思っているのですが、それが12歳なのか15歳なのか18歳なのかは個人によって異なるでしょう。
中学受験という選択をするについては、お子さんの適性と時期を見極める必要はあるかと思います。それを見極めることが出来るのは、中学受験の時点では保護者を措いてはありません。いまがそのときだ!と思ったら親子で一緒に頑張りましょう。ただし楽しくね!。

今回はここまで。
高校入試については、稿を改めます。

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